べんきのにっき

いろいろと垂れ流します。

対立仮説における尤度比統計量の漸近分布の簡単な計算例

概要

正規分布とガンマ分布において、1母数のみを検定する際、対立仮説が正しい場合での尤度比統計量の漸近分布は非心カイ二乗分布に従う。この非心度を計算する。

正規分布における例

未知の平均 \displaystyle \mu と既知の標準偏差 \displaystyle \sigma _{0}をもつ正規分布から、大きさ1000の標本をとってくる。

このとき、帰無仮説 \displaystyle H _{0} : \mu = 0 に対し対立仮説 \displaystyle H _{1} : \mu = 0.1であるとき、検定統計量が従う分布の非心度は次で計算できる

 \displaystyle
\phi = \sqrt{1000} (0.1-0) \left( \frac{1}{ \sigma _{0} ^{2}} - 0 \right) \sqrt{1000} (0.1-0) = \frac{10}{ \sigma _{0} ^{2}}

よって、尤度比統計量は \displaystyle \chi ^{2} \left( \frac{10}{ \sigma _{0} ^{2}}  \right)  に従う。

ガンマ分布における例

未知のパラメータ \displaystyle \alpha と既知の \displaystyle \beta _{0}をもつガンマ分布から、大きさ1000の標本をとってくる。

このとき、帰無仮説 \displaystyle H _{0} : \alpha = 1 に対し対立仮説 \displaystyle H _{1} : \alpha = 1.1であるとき、検定統計量が従う分布の非心度は次で計算できる

 \displaystyle
\phi = \sqrt{1000} (1.1-1) \left( \frac{ \partial ^{2}}{ \partial \alpha ^{2} } \Gamma ( \alpha ) - \frac{1}{ \beta _{0}} \frac{\beta _{0} ^{2}}{ 1.0} \frac{1}{ \beta _{0}}   \right) \sqrt{1000} (1.1-1)

 \displaystyle
= 10 \left(  \frac{ \partial ^{2}}{ \partial \alpha ^{2} } \Gamma ( \alpha )  - 1\right)

途中の計算から、この非心度は \betaに影響しないことがわかる。

尤度比統計量は \displaystyle \chi ^{2} \left(  10 \left(  \frac{ \partial ^{2}}{ \partial \alpha ^{2} } \Gamma ( \alpha )  - 1\right) \right)  に従う。

ディガンマ関数の値を適当に代入すると、だいたい6.449くらい。

余談

非心カイ二乗の分布表を参照したところ、有意水準0.05なら検出力は0.7以上はあるらしい、でも0.8には届かない。

正規分布の方は既知の標準偏差に依存する。

標準偏差が1なら検出力0.9にぎりぎり届かないくらい、標準偏差が2なら0.3はあるけど0.4には届かないようだ。 3以上の場合は低すぎて話にならなさそうである。

ところで、これを2×2の独立性の検定で求めてみるのも面白そうだ。 きっと、ものすごく低くなるんじゃないかと思ったり。